大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)3678号 判決

被告人 原太一

〔抄 録〕

原判決がその判示事実に対する適条として単に刑法第二百五十二条とのみ掲記し、同条第一項又は第二項のいずれを適用するかを明示していないことは所論のとおりである。然しながら判決に法令の適用を示すのは、判示事実に対し如何なる法令を適用したかを明らかにし、判決主文の由て来る法令上の根拠を示すことを要する趣旨であるから、法令の適用を示すに当つては必ずしも常に逐一詳細に該当法条の項号の末節に至るまでこれを明示し適用の過程を具体的に説明する必要はなく、判示事実並びに主文と相俟つて、如何なる法令を適用し判決主文が如何なる法律に基き導き出されたかを了知し得る程度に法令を引用説示すれば足ると解すべきである。これを本件について見るのに原判示犯罪事実は、被告人が自己の占有する他人の金品を横領したというに在つて公務所から保管を命ぜられた自己の物を横領したとの趣旨ではないことは一読して明瞭であり、原判決がこれに対する適条として刑法第二百五十二条を挙示したのは同条第一項を適用する趣旨であることは判示事実と対照すれば明らかにこれを看取し得て毫も疑を容れないところであるから特に、同条第一項を適用する旨を明記しなかつたからといつて法令の適用を示すにつき些かも所論の如き違法の廉はない。論旨は理由がない。

(三宅 河原 遠藤)

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